ハルアトスの姫君―君の始まり―
目を閉じたまま、微動だにしない二人の人間。
おそらく呼吸はしているのだろうが、まるで人形のように白い肌に目がいってしまう。


何故だろう、涙が出た。
理由なんてない。反射みたいに、涙が出る。
そのあまりの美しさにとも言える。でも、そのあまりの切なさにとも言える。


金の髪の男性。
そしてその隣には銀の長い髪の女性。
…髪の毛はミアに似ているが、漂う雰囲気はジアに似ている。


「ミア…。」


そう声を掛けてもミアはこちらを振り返らない。
おかしいと思って隣まで歩みを進めると―――泣いていた。


銀と金の瞳からポロポロと雫を落としていく。


「ミア。」


もう一度名前を呼ぶと、そのまま顔を上げた。
両目からまた大粒の涙が零れ落ちる。掬ってあげたくてもこの距離からでは手は届かない。


「…お前まで泣くなんて…お互い珍しいな。」


ミアはもう一度涙を落とし、そして頷いた。
おれはミアとの距離を縮めるべく、床に膝をつけた。
ミアはそのままおれを見つめている。


おれとミアの涙が同時に落ちて、重なった。

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