ハルアトスの姫君―君の始まり―
【シュリside】


〝一緒に終われるなら、僕は本望だよ。〟


…あぁ、そうだな。
私だってそれを考えた。だから、お前のその意見を全てまるごと否定することはできない。
だが…今は。





「死ぬなら共に、と思っていたことは認めよう。
だが私は今ここで生を捨てる気など微塵もない。たとえこの手が焼き裂かれても、だ。」

「シュリ!」


シャリアスの瞳にもじわりじわりと涙が浮かんできていることに気付いていた。
それでもなお、言葉を続ける。


「生きると決めた。あのお姫様を一人で戦わせておくことはできない。
あれだけ勝手な言葉を投げておいてそのままにするなんて、無責任にも程がある。」


シャリアスはもう何も言わない。
ただ瞳から涙を落とさぬように必死な表情を浮かべている。


「…お前は諦めてしまうのか?」


答えは、ない。


「たとえお前が諦めてしまったとしても、今魔力がないとしても、支えには…なる。確実に。」

「え…?」

「魔力が尽きたら、私だって立っていられなくなるだろう。
だからそうなったら、私を支えるのはお前だよ、シャリアス。」


私は一人で立っていられるほど強い生き物ではないはずだった。
そんなことはもう誰よりも何よりも自分が一番よく分かっている。


「生きる。だから共に、だ。シャリアス。」


瞬きをすると涙が零れた。シャリアスの涙も限界だった。
二つの涙が地上に到達する前に混じり合った。

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