ハルアトスの姫君―君の始まり―
「レス…ソルジャー…?」

「ヒトと同じように斬られれば血のようなものが出る。身体の成分は半分が水、そして半分が土だ。
ヒトが死に至る程度に傷を受けて、『死ぬ』と3日後に土に戻る。」

「そんなものが…。」


ジアは言葉を失った。
見た目はなんらヒトと変わりがない。それぞれが違う顔をしていて、息絶えている。
でもそれが…


「ヒトじゃない…なんて…。」


ジアには信じられない話だった。
それはクロハも同じだったらしく、険しい表情をしたまま死体を見つめていた。


「本当にヒトじゃねぇのか…?」

「そろそろ…3日なんじゃないかな。」


キースがそう呟いた瞬間に、目の前にある死体の指先、足元から順に土になっていく。
ボロボロと崩れゆく身体を見続けることができなくて、ジアは顔を背けた。
キースの手を掴んでいたジアの力が抜け、キースの手が落ちる。
力無きジアの手に触れたのは、キースだった。
優しくジアの手を包むその手は大きくて温かい。


「…これで信じてもらえたかな?『レスソルジャー』の存在。」

「…見ちまったからな。信じるしかねぇだろ、実際。」

「見た目じゃ分からない。だけど…剣を交えれば分かる。」


キースはジアの手を包む力を弱めたりはしなかった。
ジアはその手を振り払うこともなく、ただ地面を見つめていた。

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