ハルアトスの姫君―君の始まり―
目の前に転がっているのは多数の死体。
森に入ってから何度も見てきた死体だったが、今回は数が多い。


不意に視界が遮られた。
誰かの手によって。


「なっ…!」

「見なくていい、ジア。」

「き…キース…?」

「前しか見なくていい。少なくとも君は。」


その手から伝わる熱が思いの外熱い。
熱はまだ完全にひいてはいないのかもしれない。
だけどそんなことよりも、背中に感じるキースの体温と、すぐ上から降ってくる低い声にどうすればいいか分からない。


「キース…?」

「…これはヒトじゃないよ。」

「え…?」

「だから傷付く必要がない。」

「ヒトじゃ…ない…?」


目に被せられた手にそっと触れるジア。
そしてその手をゆっくりと下ろす。


「…どういうこと?」


振り返ると、キースは少し冷めた表情のまま、淡々と言葉を紡いだ。


「ヒトのカタチをしたマガイモノ、だよ。
魔法使いによって作れらた…意志無き兵士。」

「意志無き…兵士…?」

「そう。レスソルジャーだ。」

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