ハルアトスの姫君―君の始まり―
* * *


「さぁ、中へ。」


小屋の前に辿り着いた。
見た目はこの前使った空き家と変わらないくらいのおんぼろさだ。
それに訝しげな顔をしたのはクロハだった。


「小僧。そんなあからさまな顔をするな。」

「だからおれは小僧じゃねぇつってんだろ?」

「薬師とでも呼べばいいのか?」

「…っ…なんでそれを…。」

「まぁそう急くな。中へ入れ。景色が変わる。」

「…?」


言われた意味が分からず、相変わらず訝しげな目をしながら足を進めるクロハ。
でも確かに中身は全く異なっていた。想像とはかけ離れ過ぎている。


「…んだこれ…。」

「…っ…すご…。」

「俺の想像以上ですよ、シュリ様。」

「にゃー。」

「気に入ってもらえたようで何よりだ。」


見た目はただの掘立小屋なのに、中はちょっとした貴族の部屋のようになっている。
暖炉にソファー、そして大きなテーブルに厳かな椅子。
見た目と中身が一致していない。

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