ハルアトスの姫君―君の始まり―
「あ、キース。」

「なに?」

「そろそろ…下ろしてっ…。」

「あ、そうだね。シュリ様、どこか彼女を下ろせるような場所はありますか?」

「そのソファーでも何でも好きに使うが良い。」

「いやっ…だってあたし…血まみれだし、汚すわけには…。」

「まずはシャワーが先だな。その奥の扉を開けろ。そこにシャワーがある。」

「あ、でも…。」

「お前の替えの服程度は1秒で用意できる。
いいからその『血』を洗い流せ。ずっと被っていても良いものではない。」

「じゃあ…キースが先に行って。」

「え?」

「あたしよりも疲れてるし…あたしよりも酷い…から。」


思わず俯いた。
でもそんなジアの頬にキースは優しく触れた。


「…俺は大丈夫だよ。早く行っておいで。」


そう優しく言われては抵抗の仕様がない。
ジアはゆっくりと立ち上がり、奥の扉を開けた。






「随分大切にしているようだな、あの小娘を。」

「…そう見えましたか?」

「大いに見えた、とでも言っておこうか。」

「おいっ!いい加減説明しろよ!」


クロハが場には似合わない声を出した。

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