ハルアトスの姫君―君の始まり―
「何か知ってるの?」

「…そうだな。知っている。」

「それっ…」

「でも今は、教えることができない。」

「なんでっ…?」

「不安定なお前に教えるのは危険だからだ。」

「不安定…?」

「どこがどう不安定かは自分で考えろ。
そんなことも思い付かないような愚かな剣士ではあるまい。
…あの剣筋は実に見事だった。美しかったとも言える。
だが決定的に足りないものも見えたはずだ。」

「決定的に…足りない…。」

「もう、ある程度は分かっているようだな。それでよい。
今日はもう休め。身体ではなく、精神にも休息は必要だ。部屋には…。」


シュリはきょろきょろと部屋を見回して、箒に目を止めた。
指をパチンと鳴らす。するとその瞬間、箒がすーっとシュリの目の前まで飛んできた。


「うわっ…!」

「んだこれ…?」

「この箒に案内を頼もう。部屋まで案内しろ。」


そうシュリが言うと、箒は一度だけ跳ねた。


「こいつの後に着いていけ。」


ジアとクロハ、そしてミアは大人しくそれに従った。



「キース。」

「何でしょう?」

「お前には別で話がある。」

「そうでしょうね。だと思っていました。」


キースは笑顔でそう答えた。

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