ハルアトスの姫君―君の始まり―
てきぱきとした動作のお陰で15分も経たないうちに治療が終わった。


「あ、ありがと、クロハ。」

「どういたしまして。…以後気を付けろよ。」

「え?」

「おれは神じゃない。魔法使いでもない。だから治せるもんは限られてくる。
それ、忘れんじゃねーぞ。」

「…分かってるよ。」


クロハが何気なく口にした『魔法使い』という言葉が、ジアの中で引っかかった。
そして思い出す…『シュリ』の異変。


「シュリ…どうしちゃったんだろう。」

「んなもん知るか。」

「…冷たい。」

「冷たくて結構だ。お前も変に介入すんじゃねーぞ。ああいう時の人間に何言っても響かねぇ。」

「あたしのせい…かなぁ。」

「どうしてそうなる?」

「あたしが…シャリアスの名前を言ったときに顔色が変わったもん。」

「…シャリアス・ウドリック…。」


神妙な顔をしてその名を呟いたのはキースだった。


「とはいえ約束は約束だから、時間が経てばシュリ様もきっと…。」

「シュリ、本当に一人でいたいのかなぁ…。」

「え?」

「…出たな、ジアのお節介。」

「お節介でもなんでもいい!あたし、ご飯作ってシュリに持ってく!」

「好きにしろ。」

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