ハルアトスの姫君―君の始まり―
「ジアのお節介?」
ジアがキッチンに行ったことによってリビングに残ったのはキースとクロハ、そしてクロハの隣で小さく縮こまるミアだけだった。
「あいつは昔っから放っておくってことを知らねぇんだ。」
「どういうこと?」
「放っておくってことを知らねぇっつーよりは…できねぇっつーほうが正しいかもな。
ダメなんだよ、あいつ。頑なに閉ざしたやつを放置できない。
…ったく、一人になりてぇ時だってあるっつーの、生きてりゃ。」
「…そうだね。でも…。」
「?」
キースは言葉を選ぶように視線を上に泳がせた。
「シュリ様はずっと『一人』だった。
一人でいる時間は、もう十分かもしれないな。」
「…お前さー…。」
「ん?」
「一体何者?何でそんなにシュリを知ってる?」
「シュリ様は有名だからね。」
「でもおれは知らなかった。そもそも魔女の存在なんて…。」
「クロハの知識が足りないとか、そういう意味で言ったんじゃないよ。
ただ、シュリ様の存在はクロハとは違う『世界』においては有名なんだ。」
その言葉の意味を上手く飲み込めず、クロハの表情は少し歪んだ。
言葉が難しく、何通りにも解釈することが可能だ。
だからこいつは嫌いなんだ。言い方がまどろっこしい。
そう心の中では毒づくけれど、口にはしないのがクロハのプライドだ。
「お前もそっち側の人間ってことか?」
答えはキースの笑顔だけだった。
大事なところばっかりはぐらかしやがる。だから嫌いだ、こいつ。
クロハは心の中で2回目の『嫌い』を吐き出した。
ジアがキッチンに行ったことによってリビングに残ったのはキースとクロハ、そしてクロハの隣で小さく縮こまるミアだけだった。
「あいつは昔っから放っておくってことを知らねぇんだ。」
「どういうこと?」
「放っておくってことを知らねぇっつーよりは…できねぇっつーほうが正しいかもな。
ダメなんだよ、あいつ。頑なに閉ざしたやつを放置できない。
…ったく、一人になりてぇ時だってあるっつーの、生きてりゃ。」
「…そうだね。でも…。」
「?」
キースは言葉を選ぶように視線を上に泳がせた。
「シュリ様はずっと『一人』だった。
一人でいる時間は、もう十分かもしれないな。」
「…お前さー…。」
「ん?」
「一体何者?何でそんなにシュリを知ってる?」
「シュリ様は有名だからね。」
「でもおれは知らなかった。そもそも魔女の存在なんて…。」
「クロハの知識が足りないとか、そういう意味で言ったんじゃないよ。
ただ、シュリ様の存在はクロハとは違う『世界』においては有名なんだ。」
その言葉の意味を上手く飲み込めず、クロハの表情は少し歪んだ。
言葉が難しく、何通りにも解釈することが可能だ。
だからこいつは嫌いなんだ。言い方がまどろっこしい。
そう心の中では毒づくけれど、口にはしないのがクロハのプライドだ。
「お前もそっち側の人間ってことか?」
答えはキースの笑顔だけだった。
大事なところばっかりはぐらかしやがる。だから嫌いだ、こいつ。
クロハは心の中で2回目の『嫌い』を吐き出した。