【完】風に恋をする。
はにかんで笑う君が、さらに可愛くて。
初めてだよ、こんなキモチ。
このキモチは…伝えられない。
伝えたって、君を困らせるだけってわかってるから。
「でも、あたし、花火好きだから」
「…そっか」
心が踊るのが、自分でもわかった。
「先輩は、好きな人はいないんですか?」
「俺? 俺はね、自分が一番好き」
「あっはは! なにそれっ」
「…随分、笑うようになったな」
「ぇ…?」
「独り言だ、独り言」
「ぁ、ぶちょっ」
「ぇ、ぐぇ」
そんな会話をしていると、後から誰かに飛び蹴りされた。
「鍛え方が足りんぞ、部長」
「立川さん?!」
「よっ! また、会ったな!」
「お久しぶりです!」
「…随分良くなったみたいじゃねーか」
立川さんはそう小さく呟いて、優しく笑った。