【完】風に恋をする。
…つーか、
「部長」
「んー?」
「雅弘の本当のタイムは?」
俺の質問に、健と隆也が目を丸くする。
さっきのタイム、噓のように思えたんだ。
雅弘は、陸上部の中で確実に速い方なのに、400mが50秒台なはずがない。
「…やっぱ気づいたか」
「当たり前っすよ。あいつは、俺とそこまでタイムは変わらない」
「本当のタイムは、49秒02」
「!!!」
「やる気、でたか?」
「…」
「ったく…お前の走りは周りにやる気を与えてくれるから助かるよ」
「そんなつもりないっすけど」
「ふははっ! そりゃ、そうかもなーっ!」
「…」
この人は…どこまでが冗談かわからない。
だから、あんまり好めないんだ。
いい人なんだろうけど…。