私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
「あのな、人間ってのは不幸を積み重ねて生きるもんなんだよ」

「そんな人生、嫌だよ」

不幸ばかりの人生になんてゴメンだ。欲を言えば、お金に不自由せずに、誰からも少しは羨ましがられるような人生を送りたいと思っている。

「苦労と不幸を一緒に考えてんじゃないのか?」


(苦労と不幸……)


その意味を問いただしたかったが、なんでも知っているような素振りの春樹がしゃくに思えて、

「そんなことないよ」

と、生返事をした。


春樹はタバコに火をつけて、煙をいっぱいに吸うと、おいしそうにそれを吐き出して言った。


「俺は石ころだからな」

「石ころ?」


聞き返した私に意味ありげな笑みを浮かべ、春樹は話を続けた。


「人生が宝石みたいに輝いてるものと決め付けてる奴はな、小さな傷ひとつ付いただけで人生に価値を見出せなくなっちまう。そして、人生をリセットしたいってずーっと思いながら生きていく。石ころはな、傷だらけになるのが当然なんだよ。でもな、ずっと身を削られてると、いつかはつるつるの丸い石になるんだよな」


(ちょっと……哲学者みたいなこと言ってるじゃない)


私はそんなことを口にする春樹の顔を眺めていた。少しの驚きと敬意をこめて。

その視線を受けて、春樹の表情が崩れた。


「ああ、昨日の新聞のコラムに載ってたんだ」

「なんだ……」


ちょっとがっかりだ。このときは春樹が新聞なんかとっていないことには気づかなかったのだが。


とにかく私と春樹の希望に満ちた人生計画は、残念ながらまた借金生活から始まることになった──
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