私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
それを夏子さんに言った。


「子供を堕ろします」


産婦人科で手術をするようなお金もない。川にでも入って、無理やり子供を殺すしかないだろう。

自分の命だってどうなるか分からないが、いまの私には、それしか道が残されていないような気がしていた。

しかし──


次の瞬間、火がついたような痛みが頬に走る。

激しい音が狭い店内に響き、私はいま、夏子さんに頬を張られたことを理解した。


あっけにとられる私を睨みつける夏子さんの目は、今まで見た誰の目よりも厳しいものだった。


「あんた、自分が何を言ってんのか分かってんの!」


その厳しい声に私の身がすくむ。それでも、私にも言い分がないわけじゃない。

「だって、産んでどうするんですか。育てられるわけないじゃない」

「そんなのあんたの覚悟しだいだよ。自分の腹にいるからって、その命が自分の一部だなんて思ってんじゃないだろうね」

「夏子さんには分からないよ。自分が私の立場だったらどうします。施設に入れても、そんな子供、不幸になるために産まれて来たようなものじゃない」
< 191 / 203 >

この作品をシェア

pagetop