私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
「私はもうすぐ死ぬの。だから、なおさらその子には生きて欲しい」


夏子さんはきびすを返した。そして、

「お風呂行ってくるから」

と言って、バッグを抱えるとアルミ戸から出て行った。


取り残された私は、そのまま力なく椅子に座るとしばらく泣いた。

それはこれからの夏子さんを想ってのものだろうか、それともお腹の子供を案じてのことだろうか、それとも自分の弱さをなげいたものだろうか。


それは私にも分からなかった。


(夏子さんの言うとおりだ)


生きることの厳しさも知らない、たかが役所の公務員風情の言葉ひとつで、人間ひとりの運命を決められるわけはないのだ。

私は涙を拭った。こんなことで涙する自分が情けない。


(こんなモチベーションで、これからの人生、自分ひとりすら救えるわけないじゃない)


バッグを抱えると、そのまま銭湯への道を歩き始めた。もう夏子さんは風呂から上がっているかもしれない。

でも私は一緒に入りたかった。

そのままの、激しく、壮絶な人生を歩んでいる夏子さんそのものを見て、勇気をもらいたかったのだ。


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