私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
番台のおばあさんに小銭を渡すと、女湯に飛び込んだ。

まっさきに目に入ったのは、骨と皮になった背中を拭いている夏子さんの姿だった。思わず目をそむけてしまいたくなるほどの凄惨な体。

やせ細った背中に赤黒い大きな手術痕が走っている。これが片方の肺を切り取った痕だとはわからなかったが、大きな病魔と闘っている姿には悲愴感と強さが同居していた。

どんな闘病をすればこんな体になるのだろうか。私には想像もつかない。


だが、それが現実。夏子さんの現実なのだ。



私は背後から声をかけた。


「お腹冷えるとこの子に悪いからさ、早めに来ちゃった」


その言葉を受け取った夏子さんは一瞬驚いたが、すぐに嬉しそうに笑うと

「うん、そうだね」

と、明るく言ってくれた。

でも、私は夏子さんと一緒に入りたかったのだ。

「夏子さんも、もう1回入るでしょ」

すると、夏子さんは方頬をあげて、大きく息を吐いた。

「仕方ないな。でものぼせるから、ちょっと涼んで入るよ。先に髪と体洗っといでよ」

私は大きくうなずくと、ぱっぱと服を脱いで、湯気のなかへ飛び込んでいった。
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