私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
夏子さんは安心したのか、歯を見せて笑うと体を離して歩き始めた。その足取りも軽い。

すると、閑静な住宅街に思いがけなく笑い声が響いた。

声の主は目の前の夏子さんだった。それも、下手な舞台役者がおおげさに笑うような不自然さをともなったものだ。

「ほら、雪も笑いなよ。笑う門には福来るっていうじゃん」

正直こっちはドン引きしている。

いくらひとけがない道とはいえ、見てるこっちですらとんでもなく恥ずかしい。

というか、何ゆえの行動だろうか。もしかして

(病気でおかしくなったんじゃ……)

というくだらない疑問にも、あながち信憑性がないとは言い切れない。

夏子さんの笑いはとまらない。

「ねえ、私たちには笑いが少なくない?」

その問いに、私は少なからず胸をつかれた思いになる。

確かにそうだ。

< 202 / 203 >

この作品をシェア

pagetop