私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
と、言われるがままに番号を教えていた。

(あれって、女子だけだったんだ)

優しい運転手かと思ったのだが、そう言われると、素直に好意を受け取れないような気がする。


ようやく遅れてきた女子社員がバスに駆け込んできたのは、予定時間を20分も遅れたころだった。

(あいつだったのか)

年のころなら同じくらいだが、私と違って露出の高い服装をしている。

同じ工程にいる女性の派遣社員だった。

私服だと、まるで今から夜の街に出勤でもしそうだ。


「ごめーん、待ったぁ?」

乗り込むなり、甘ったるい声で運転手に話しかけている。

「いやあ、気にしないでいいから」

このバスは、いつからこの女の私用車になったのだろうか。


そのやり取りを聞きながら、さきほど不満をもらしていた男性社員は、大きなため息をついていた。



2週間ほどがすぎ、ようやく仕事の要領も得てきた。

私の担当する工程では、できあがったチップを紙のテープに挟み込んでロールに巻いてゆく。

最終工程だけにクレームも多く、神経を遣うのだという。

テーピングと呼ばれるこの工程に、あのときバスを待たせた女もいる。


渡辺という名前だった。
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