鈴の音が響く頃

『この短時間ではあるが…キョウコには、鈴姫に負けず劣らずの霊力がある。そしてきっとそれはさらに大きく、強くなっていくだろう。そしてその霊力を、
こやつらに少し分けてあげられないだろうか』


「いや、分けるって…どうやって?」


『それは簡単だ。私が教えよう。いまは、キョウコが主になってくれるかどうか。そこなのだよ』

「で、でも…」


ちらっと、二人を見る



私が主…とやらになったとして、この二人は
きっと…嬉しくないだろう

二人は、鈴姫のことを
とても、とーっても
大切にしているから…



「私なんかでいいの…?」


『おぬししかいない。』


楓ちゃんの、強い視線

絶対嘘ついてない。
それは分かる。分かるけど…


『こやつらが鈴姫にこだわるのは、今現在の主が鈴姫だからだ。
主が変われば、式神たちは
主を一番に想う』


…楓ちゃんの言葉で、二人の空気が変わった

辛そうで…



「一番に想うって…じゃあ鈴姫はどうなるの?」


『それは、キョウコ次第だ。忘れろと命じれば、
二人は鈴姫の記憶をすべて消す』


「それはダメだよ!!!」



私は叫んでいた

ふたりが、驚いて
ぱっと私を見た



「だって、紅と紫さんの…
大切な人なんでしょう…?忘れる方も、忘れられちゃう方も…悲しいよ」






少しの、沈黙



ああ、私はいきなり
なにを叫んでいるんだろう…


でも、二人が
鈴姫を
本当に本当に大事に思ってるんだなって

すごく、よく分かったから…


鈴姫は、ほんとに、
素敵な人だったんだろう


会ってみたい気がするけど
鈴姫の魂は、私の中にあるんだよね…


鈴姫がいて、私がいるんだ
だから




「…ありがとう」



はっと、我に帰る


紫さんが私を見上げ
優しそうな笑みを浮かべている


「そういうところは、鈴姫と一緒なんだね」


「そ、そうなんですか?」


「ほんと…ムカつくくらい、おんなじだ。」


紅がまたそっぽを向いて呟いた



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