鈴の音が響く頃
『祠へ、行け・・・そこで選ばれるだろう
違えば、排除されるのみ』
「・・・・」
恐ろしいことを、さらっと言う
過去にも、そういうことが何度かあったのか
「杏。ごめんね・・・」
近くの木陰に杏を座らせ、立ち上がる
ここから祠まで、直線で10メートルほど
だけど、どうしてか、遠く感じる
「響・・・・古・・・・」
杏が、私のスカートの裾を引っ張る
行くな という意味だろう
「行かないと、いけないみたい・・・」
「響古・・・!」
杏の周りには、おびただしい数の
黒い・・・・ドロドロした魂が、まとわりついている
良くない、魂
もしこのまま帰ったりしたら、杏に悪影響が出る
それは、阻止しないと
「すぐ、戻ってくるから!!」
「響古・・!行っちゃ、だめ・・・・!!」
カクンと、杏が倒れる
「杏・・・!」
気を失って、眠ってしまっていた
表情は、とても苦しそうで・・・・
「杏は、関係ないでしょう。彼女に手を出さないで!」
風がブワッと吹き、髪が舞い上がる
『・・・私は彼女には干渉していない』
声がつぶやく
『この場所は、ある人の死から
呪われてしまった。そして来るべき時まで
魂は開放されず、この場所に留まることとなった。
村の者達も・・・私も』
「村?」
祠へゆっくり、ゆっくり進みながら
声を聞いていた
『その昔・・・ここはある大きな集落があり、そこを統べていた人がいた』
「誰?」
『・・・鈴姫(すずひめ)だ』