AKANE

13話 裏切り

 朱音は一人になった檻の片隅で、与えられた薄手の毛布にくるまり、夕刻に起こった出来事を思い出していた。

「早く出ろ! もたもたするんじゃねえ、ガキども!」
 奴隷売りの大男達が鞭を片手に檻の中の子ども達を追い立てた。子ども達はべそをかきながら、檻の外へと出されていく。どうやら、競り市の開催場所へと到着した模様だった。
 カロルはぎゅっと朱音の服を掴んだまま、決して離そうとはしなかった。
「早く出ろ! 煩わせるな!」 
 苛立ち始めた男が鞭を持つ手を震わせ始めたので、朱音は何とかカロルを宥めて一緒に檻の外へと出ようとした。
「おっと、お嬢ちゃん。君はここで降ろさないぜ」
 眼帯の男が、にやりと不気味な笑みを口元に浮かべ、縋り付くカロルを無理矢理朱音から引っぺがした。
「アカネお姉ちゃん・・・!」
「カロル!」
 不安と恐ろしさでカロルは泣き喚いている。
 しかし、朱音にはどうすることもできなかった。
(きっとなんとかするって約束したのに・・・。ごめんね、カロル・・・、皆・・・)
 ぎゅっと立てた膝に顔を埋めるようにして、朱音は蹲った。
 今頃になって、ベッドの下に隠したアザエルの身体が心配になった。
 クリストフはあの後あの宿に戻ったのだろうか? アザエルの隠し場所に気付いてくれただろうか? もし気付いて無かったとしたら、昼間にボリスに会った際に一緒にお願いしておけば良かったな、等と。
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