AKANE
真っ白く長く生やした髭は、少し見ない間に少し伸びたように感じる。
「フェルデン殿下、肩の傷の具合を診に参りました」
ユリウスが気をきかせ、フェルデンの傷が診やすいようにと彼に場所を譲る。
フェルデンは、彼に診せる為に、上半身は巻かれた包帯を残して、着替えたばかりだった上着を全て脱衣した。
フィルマンは、その巻かれた包帯を丁寧にはずしてゆく。
「旅の道中、傷が悪化して一時生死をさ迷ったと伺いました。わたしには、あの深い傷で任務をこなされたこと自体不思議でなりません」
フィルマンは、その手を動かし続けながら話した。しかし、全ての包帯を取り去ると、驚きのあまりその手を思わずぴたりと止めた。
「これは・・・」
フィルマンの様子がいつもと違うことに気付き、ユリウスが背後から声を掛ける。
「どうかしたんですか?」
ごくりと唾を飲み込むと、フィルマンはユリウスを近くに呼び寄せ、フェルデンの肩の傷の説明を始めた。
「見なさい、それ程悪化した傷が今ではほぼ塞がっている。この処置からするに、おそらくは血抜きをしたのだろうが、その際のメスの跡がほとんどと言っていい程残っておらん・・・。この傷を診た医者とは、余程の名医だったのだろう」
ユリウスの脳裏にふとボウレドで出会った町医者、フレゴリーが横切った。
「フレゴリー・・・」
ほとんど無意識にユリウスが口走ったその名前を、フィルマンは聞き逃さなかった。
「フレゴリーが殿下の傷を!?」
きょとんとフェルデンがフィルマンの老いた顔を見返す。
「ええ・・・。フィルマン先生はフレゴリーを知っておられるんですか?」
ふむと小さく声を漏らすと、フィルマンはすっかり年老いた手で医療箱の蓋を開いた。
フィルマンは五十五年前の出来事を追思していた・・・。
「フェルデン殿下、肩の傷の具合を診に参りました」
ユリウスが気をきかせ、フェルデンの傷が診やすいようにと彼に場所を譲る。
フェルデンは、彼に診せる為に、上半身は巻かれた包帯を残して、着替えたばかりだった上着を全て脱衣した。
フィルマンは、その巻かれた包帯を丁寧にはずしてゆく。
「旅の道中、傷が悪化して一時生死をさ迷ったと伺いました。わたしには、あの深い傷で任務をこなされたこと自体不思議でなりません」
フィルマンは、その手を動かし続けながら話した。しかし、全ての包帯を取り去ると、驚きのあまりその手を思わずぴたりと止めた。
「これは・・・」
フィルマンの様子がいつもと違うことに気付き、ユリウスが背後から声を掛ける。
「どうかしたんですか?」
ごくりと唾を飲み込むと、フィルマンはユリウスを近くに呼び寄せ、フェルデンの肩の傷の説明を始めた。
「見なさい、それ程悪化した傷が今ではほぼ塞がっている。この処置からするに、おそらくは血抜きをしたのだろうが、その際のメスの跡がほとんどと言っていい程残っておらん・・・。この傷を診た医者とは、余程の名医だったのだろう」
ユリウスの脳裏にふとボウレドで出会った町医者、フレゴリーが横切った。
「フレゴリー・・・」
ほとんど無意識にユリウスが口走ったその名前を、フィルマンは聞き逃さなかった。
「フレゴリーが殿下の傷を!?」
きょとんとフェルデンがフィルマンの老いた顔を見返す。
「ええ・・・。フィルマン先生はフレゴリーを知っておられるんですか?」
ふむと小さく声を漏らすと、フィルマンはすっかり年老いた手で医療箱の蓋を開いた。
フィルマンは五十五年前の出来事を追思していた・・・。