AKANE

5話 決戦のとき


「フェルデン殿下・・・! 敵の勢力が強すぎます・・・!」
 ゴーディアの歩兵は主に魔力の弱い兵士ばかりで編成され、サンタシの騎士団でも十分に対抗できる兵力であった。
 しかし、騎兵の方はある程度の魔力を持ち合わせたエリートで、サンタシの選りすぐりの騎士達もかなり苦戦していた。
『バラバラバラ』
 後方で、港を取り囲んでいた石壁の一部が崩壊していく。
 崩れ始めた石壁の上から、人形のようにサンタシの兵がともに落下していく。
「ユリウス! あの男を止めろ!」
 美しい栗毛の馬に跨るゴーディアの騎士は、一際強力な魔術を駆使し、植物の蔦をまるで生き物のように操り、石壁をばらばらに砕いていく。
 湧くように向かってくるゴーディアの歩兵を薙ぎ払う手を止めないまま、フェルデンが部下に下命した。
 ユリウスは小柄を最大限活かし、愛馬の手綱を思い切り引き上げる。馬は身体を捩り前足を高く掲げると、群がる歩兵達を蹴散らしながら方向を転換した。
 全速力で向かってくる小柄の騎士に気付き、ゴーディアの騎士は咄嗟にユリウスの剣を避ける為に馬の手綱を取る。
 ゴーディアの騎士の甲(かぶと)には、はっきりと黒翼の紋章が焼き付けられてある。階級が高ければ高い程、紋章の色が黒く克明になっていくのだ。それは、この男が相当の高い階級の騎士であるということを物語っていた。
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