AKANE
 ファウストは自分の飛竜が上体を起こすことが困難だとわかると、自ら飛竜から手を離した。尚勢いを止められない赤い飛竜は落下を続ける。だが、もう目前まで地上は迫っている。
 町の人々が異変に気付き、天から真っ逆さまに落下してくる自分達を指さして目を丸くしているのが見えた。中には驚きで口をあんぐり開けている人も。このままでは、自分達だけでなく町の人達も巻き添えにしてしまい兼ねない。
「まずいっ!!!」
 フェルデンも焦った声を上げた。
 朱音は汗ばむ手を翳すと、そっとスキュラの背に宛がった。途端、勢いづいていたスキュラの身体がふわりと浮き上がり、徐々に上体を起こしていった。
 一方、主人に見捨てられた赤い飛竜は今も勢いを止めることなく地上へ真っ逆さまに突進している。
『ぐぅぅぅ』
 赤い飛竜の悲しそうな唸り声が聞こえた。
「待ってて、今助けるから!!」
 朱音は上昇を始めたスキュラから、落下を続ける赤い飛竜へと腕を伸ばした。
「クロウ!! どうする気だ!」
「大丈夫!!」
 フェルデンの腕を摺り抜け、朱音は無謀にも赤い飛竜の背に飛び移った。
 一歩間違えれば乗り移りに失敗していたかもしれないというのに、朱音にはどういう訳か一切の恐れが消え去っていた。なぜか今の自分なら成せないことは何もないという確信さえあった。
 地面はもうすぐ傍まで迫っている。
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