AKANE
 まさに一瞬のことだった。
 赤い飛竜の肩方の翼を、ファウストの放った炎弾が無遠慮に焼き千切ってしまったのだ。痛みと熱さのあまり、飛竜はパニックを起こして暴れまくり、朱音は振り落とされそうになる。
「クロウ!! 掴まれ!!」
 朱音が赤い飛竜の背から弾け飛んだ瞬間、スキュラとその背のフェルデンが華麗にその軽い身体をキャッチしてみせた。
「大丈夫か?」
「なんて酷いこと・・・」
 朱音は苦しみながら片羽になってしまった赤い飛竜がふらふらと町外れの方へと飛び去っていくのを涙を浮かべて見つめていた。
「ファウスト・・・! どうしてあんな酷いことができるの!? あの子はあんたの友達なんじゃないの!?」
 朱音は怒りで思わず叫び出していた。
「友達・・・? そんな甘ったるいもんは俺には要らない。俺に必要なのは、強さだけだ」
 ドラコの仲間を灰にして同化した後、ファウストの中の何かが変わってしまっていた。
「俺を止めたけりゃ、俺の息の根を止めることだ。クロウ陛下。あんたがぬるい考えを捨てないんじゃ、俺は容赦なくこの町さえも灰に変えてやる」
 ファウストは、炎弾を町に向けて放つ構えをした。
「やめて!! これ以上罪の無い人を傷つけるなんて、絶対に許さないから!!」
 朱音が止めようとスキュラに合図を送ろうとした瞬間、フェルデンがそれを静止した。
「待て、クロウ! 何か様子がおかしい・・・!」
 じっと耳を澄ませば聞こえてくる・・・。何百という馬の蹄の音。轟・・・。
 地平線の無効から少しずつ見え始めたのは、黒地の旗には真っ赤な蛇が二匹絡みつくような紋様が描かれている、騎馬隊の大軍・・・。
「あれは一体・・・」
「見たことのない蛇の紋様・・・。あんな大軍、いつの間に・・・」
 ファウストは一瞬戸惑いはしたものの、自らの使命を全うするために、手を街へと構えた。
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