AKANE
「サンタシ国の王よ、心配なされるな。我らの目的はサンタシ国を乗っ取ろうとするものではない。寧ろ、創造主を崇め、敬う点からすれば貴国の民とは同志だとも言える。我らは唯一絶対の神である創造主のご意思に従い、立ち上がった神兵なのだ」
「同志・・・?」
 フェルデンはクロードの心の内を読もうと訝しげに眉を顰めた。
「いかにも。我ら絶対の神、創造主は魔王ルシファーの手により長き間蔑ろにされてきた。それだけでも耐え難い屈辱であったが、我らは耐え忍んできたのだ・・・。にも関わらず、魔王の息子は自らの力に溺れ、痴態の限りを尽くし、このレイシアを危機へと陥れたのだ。一時は平和を取り戻しつつあったこの世界を・・・!」
 フェルデンはこの目の前の軍が一体何を目指しているのかを知った途端、手の平が僅かに汗ばむのを感じた。
「・・・お前達の目的は、クロウなのか?」
 含みのある笑みを浮かべると、クロードは答えた。
「味方の出現というのに、あまり嬉しそうではないようだな・・・。サンタシの王よ、貴方が追ってきた敵というのは、この先にいるクロウ王ではないのか?」
 これは不味いことになった、とフェルデンは思った。まだ少年王とファウストのいる場所までは少し距離があるものの、この距離ならば直ぐに追いついてしまうだろう。
 以前のフェルデンならば、この思いも寄らない助っ人に、まさに神の導きだと喜んだのかもしれないが、今のフェルデンにとって、このザルティスの神兵達の出現は、物事をより面倒にするものの他以外の何でもなかった。
「残念だが、この先にクロウはいない。今すぐおれの国から去れ」
 これ以上、問題をややこしくすることはできない。それに、クロウの正体に気付いてしまったフェルデンは、なんとしても最悪の事態から彼を守りきらねばならなかった。
「・・・? なぜそのような見え透いた嘘を・・・? これがある限り、奴がこのすぐ近くにいることはわかっている」
 クロードが取り出したものは、奇妙な光を放つ魔光石であった。
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