AKANE
「その魔光石は・・・」
「これはその昔、我らが祖先ザルティスの神官が魔王ルシファーの血のみで作り上げた魔光石だ。主が近ければ近い程、この石が反応し光を放つ」
 いつの間にか、少年王とファウストの闘いは開始されていたようで、赤い炎がちらつき、ときおり破壊音が耳に届いてくる。
 フェルデンは、直ぐにでも彼の元へ駆けつけたい思いともどかしさでいっぱいであった。
(くそっ、どうしておれは彼をここへ連れてきた・・・! そもそも、どうしてもっと早くに気付かなかった・・・!)
 ぎりと奥歯を噛み締めると、フェルデンはクロードに鋭い視線を送った。
「本当の敵はクロウではない! 彼は何者かに悪者に仕立て上げられただけだ。おれはサンタシの国王として、お前達をここから通す訳にはいかない!! それでもまだここを通ろうとするならば、おれは全力でお前達を阻止する!!)
 フェルデンは、剣を鞘から抜き去ると、クロードに向けて構えた。
 これだけの大軍にも関わらず、しんとその場が静まり返っている。
「サンタシの王よ、後悔するぞ」
 クロードは脱いでいた甲を被り直すと、さっと同時に剣を二本抜いた。通常よりも細く少し短い刀身の剣を、彼は両の手に構えた。柄の部分には、旗と同じ紋様が刻まれている。
「我らの邪魔をする者は、たとえ何者であれ排除する!」
 クロードから殺気が放たれた。
 フェルデンの金の髪が、優しい風にふわりと流れたと同時、二人の騎士は互いの間合いに渾身の力を込めて踏み込んだ。
 
 今この時、ゴーディアとサンタシの二人の王は、それぞれの信念のもと、一歩も退けない死闘へ足を踏み出したのである。


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