AKANE

18話 旅の終焉


 この町中でファウストの攻撃が始まれば、住民の被害は測り知れない。
(なんとかしないと・・・!)
 ファウストは炎弾を街に放とうと手を振り上げた。
「やめて!!!」
 朱音の意思でクロウの肉体から湧き出る黒い煙は大きな手の形になって、勢いよくファウストの放った炎弾を全て包み込んだ。
 ぶすぶすと燻った後、朱音の黒い大きな手の隙間から灰になったそれがぱらぱらと舞い落ちた。
 ファウストはにやりと笑みを浮かべると、再び炎の塊を作り出す。
「クロウ陛下。世界最大の魔力とやらは、そんなもんじゃねぇだろ? 本気を出してみな」
 怖ろしいことに、ファウストはこの状況を楽しんでいた。
「もうやめて! これ以上罪の無い人達を傷つけるのは・・・! ここじゃ闘えない!!」
「聞こえないね!」
 ファウストは朱音の言葉を無視するかのように、次々に街へ向けて炎弾を放ってゆく。
 懸命にそれを一つ一つ掴んでは消すという、地道な作業を繰り返すしかない朱音だったが、ファウストはその反応を見ては楽しそうに高らかに笑った。
「だんだんスピートを上げてくぜ。早く俺を殺さなきゃ、この街と住民が消えてなくなっちまうぜ」
 徐々に速くなるそれに、朱音は必死だった。
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