AKANE
 ただ、この街の人達を守りたいという朱音の思いが、ファウストの放つ炎弾を確実に消してゆく。
「えらく粘るな。じゃ、これはどうだ?」
 ファウスト攻撃の手が一旦止まると、ファウストは特大の炎を創り始めた。
 めらめらと燃えるそれは、朱音にルイを失った日のことをありありと思い出させる。
「防ぐばかりじゃ俺を殺せねぇぜ」
 あっという間に家一軒分はありそうな巨大な炎の塊になったそれを、ファウストは頭上に投げ上げると同時に回転をかけた。
「!!!」
 頭上高くに投げ上げられた炎の塊は、回転しながら次々と炎弾を無作為に放ち始めた。
朱音が焦って、それを掴みにかかるが、次々に発射される上どこから放たれるのかが予想できない為、全てを掴みきることができない。
『びゅうううう』
 唸りを上げながら朱音が掴み損ねた炎弾が街のあちこちに突っ込み、燃やしていく。
 さっきまでのどかだった街並みが、みるみるうちに地獄と化してゆく。
 人々の悲鳴があちこちで上がる。
 炎に包まれゆく街に、朱音は震える手でそれでも尚炎弾を防ごうとしていた。
「あっちに気をとられて、本体の防御が疎かになってるぜ」
 いつの間に近付いたのか、ファウストは朱音のすぐ背後に回り込んでいた。その手には見たこともない武器が握られている。
 咄嗟に煙のベールでその攻撃を防ぐが、その分、炎の塊が放つ炎弾を防ぐ手が緩くなり、みるみるうちに街へと炎弾が着弾してゆく。
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