3 year 君と過ごした最後三年  (version.mystery and suspense)


「どう? かわいい?」


そう聞いてみる。裕也の眼がわたしをひと見し、なにもいわず頬笑みすぐにそらされていく。


男性は年齢を問わず「かわいい?」とか「似合う?」という質問が苦手のみたいだ。


「でもチケット代は理子がお金払ってるんだよ」


不安になり聞いてみた。


「なら、あの子にもなにかあげないといけないな」


気にも留めず彼はいった。


「理子のことだから口をとがらせて怒ると思うよ」


「いえてるな」


「駄々こねると思うよ」


「だろうな」


「隠しとかないといけないね」


「そうだな」


「秘密だね」


「秘密だな」


「裕也……」


わたしはそういい彼をみた。


「うん?」


彼はそういいわたしをみた。


「ありがとう……」


「……。……いくぞ」


話しを流し頬笑み、裕也はまた歩きだしていた。


その背中を少しだけ見詰め、わたしは走りだしていた。


小さく歩幅を刻むたびに、バレッタがその存在を知らせてきた。


その感触は冷たくも、心地よくほてりを冷ましてくれていた。


わたしは彼に


「待ってよ。裕也」


そう言葉を、かけた。












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