3 year 君と過ごした最後三年 (version.mystery and suspense)
裕也の隣りでわたしはわらっていた。
時折、髪に手をまわしてみては小さく呼吸をはく。歩みを落とすと揺れはやわらぎ、バレッタの感覚は夜のなかに消えてしまう。
それに触れてはその存在を確かめ、わたしはまたわらっていた。
「遥香は志望校決めたのか?」
わたしの隣りで裕也はいった。
「成績は聞いたけどまだ決めてない。厳しいこといろいろいわれたし、考えてるところ」
「大変だな……」
「時間はまだあるしなんとかしないとね」
「そうだな。がんばらないといけないな」
ふたりの家は丘の街のなかでも高台にあった。その道を、ふたりゆっくり歩いていく。
住宅街中心に近づき徐々にその灯りおとした道を、ふたり静かに歩いていく。
おだやかな道をふたりゆっくりとのぼっていく。五分と続く坂を、ふたり静かにのぼっていく。
暗く小さな十字路が、先に続くわずかな距離をしらせていく。頂近く、家まで数百メートルしらせていく。
その先、ふたりの家はある。