3 year 君と過ごした最後三年 (version.mystery and suspense)
「遥香……」
彼はもう一度いう。互いの家の門扉が見え、時を奪っていく。
「う、ん……」
夜に影が降りていく。月がその姿を、隠していく。
わたしは立ち留まり、彼を見詰める。
「……いいよ」
そういう。
「ほ、本当にいいのか?」
彼は驚きとも戸惑いともとれず表情を失くしている。
「でも勉強は面倒見てくれる? いまの成績ではキツイんだけど」
「わかってる。合宿でも徹夜でもなんでもするよ」
「あついなあ」
わたしはそういいわらって、もう一度だけ彼の眼をみた。
「じゃあ明日ね」
バレッタを髪にもどし、また歩きだした。
「ああ、また明日」
彼がそういい頬を緩めていた。