マザーレスチルドレン
「放射性物質……ハルは毎日死んでいく人見ってからな……。貧乏人は安全な食品なんて高くて食えないし、わかんなくなるよな、確かに」


「うん、水と食品に混入してる放射性物質はまだ除染できないんだ、土壌も汚染が進んでるし、相変わらず政府はこの件に関して正しい情報を開示しない。

大体ネオシティの外の世界がどうなってるのかさえわかんないしね。

外部の人間は放射能を取り込んで体内で濃縮してしまう生体濃縮が進んでひどい有樣だって聞くよ。まあ、あくまで噂レベルだけど……」


「うーん、かと言って、安全な輸入食品は俺たち貧乏人には高嶺の花だ。貧乏人は安全な食品なんて高くて食えないし、わかんなくなるよな、確かに」


「うん、リカやユウジが大人になる頃って……どうなってるんだろうな、良くなってるって思うマスター?」


ハルトはマスターに尋ねる。


「そりゃあ……。あいつらは健康だし俺達と違って長生きもできる。でも今後この国の状況が良くなるのは考えにくいな」


「だね」


「だからアイツらは頑張って勉強してもらって将来は友愛党員になってもらうしかないって思ってるよ、オレもレイコも」


「友愛党かあ……」


ハルトは天井を見上げた。


「でも部活終わってさあ、腹減ってて、帰り道のコンビニでお湯もらって作った食ったカップラーメン。あれが一番かな、うまかった思い出でいうと」


しばらくの沈黙の後、マスターがしみじみといった。


「まだ言ってんの」


二人は爆笑した。
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