マザーレスチルドレン
「ああ、お前の国の奴らは昔から金のためなら平気で


女子供も殺るんだったな、なあヤオ」


ヤオ・ミンは相変わず無反応だ。


車は信号で停まった。


「まったく、お前らの民族には美意識ってもんがない」


ヨシオカはパワーウインドウのスイッチを押し窓を全開にすると


外に向かって痰を吐き出した。


ムッとする外気が車内に入ってきた。



「この車もお前の国で作ってるんだよな。


いい車だぜ。


調度品としてもな。


俺は大嫌いだけどな」


ヨシオカは革張りの後部シートを撫で回している。


「ヤオ、お前ぁ、大体なんでこんなしょぼい馬のクソみたいな


堕ちぶれた国に来たんだ。


お前の祖国は、今や世界一の軍事力と


経済力をもってやがるのに」

< 44 / 178 >

この作品をシェア

pagetop