マザーレスチルドレン
今日はやけに蒸し暑い。


空はどんよりと曇っていた。


───すっかり長居してしまった。天気予報は夜半に雨になると言っていた。


───早く帰らないと、雨に降られたら大変だ。一応傘は持ってはきた、


でも放射性物質を多く含んだ雨の中、


子供連れで歩くのはまっぴらだった。


「ねー、どうしてユイちゃんのおウチはあんなにおいしいものがあるの?」


「それはねえ、ユイちゃんのパパは友愛党の幹部だからよ」


「ねー、ユーアイトウっておいしい?カンブってなに?」


ユウジがレイコに向かっていった。


レイコは思わず吹き出してしまった。


「ばかだね、ユージは、友愛党は食べ物じゃないってばっ」


リカは、ユウジの頭を小突いた。


ユウジは大げさに頭を押させてうずくまった。


「いたいよーー、ママー、リカがなぐったよ」


「んでさぁー、あんなケーキとか果物とかお肉とかあったじゃん、


あれって毒が入ってないの?」


「うん、ユイちゃんちのは大丈夫だよ」


「でもさあ、うちのお店の料理は毒が入ってるんでしょ?」

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