ひとつの恋に出逢った。
姉はディスプレイを見て少し間をおいて電話に出た。
「…と、戸川、くん?」
耳を近づけたけどよく聞こえない。
『あっ、お、小村か?』
あ、少し聞こえた。
「あっうん!!小村だけど!」
その後、少しだけ聞こえた。
はっきり聞こえた。
『…好き』
姉の顔つきがかわる。
どうせいつもの恋愛相談だと思っていたんだろう。
「逸樹…あっち行ってて?」
「……。」
誰がこんなオイシイ場面で出て行くんだ。
「うん…うん…でも私…うん…」
申し訳なさそうに眉を下げて姉はうんしか言っていない。
「ごめん、友達としか思えなくて、…え!?いないよっ!」
彼氏か好きな人を聞かれたらしい。
「いない!いない!そんな物好きいない!」
告った奴にいうか、それ。
こいつバカだね…。
「うん…じゃあね…また明日」