ひとつの恋に出逢った。


姉はディスプレイを見て少し間をおいて電話に出た。

「…と、戸川、くん?」

耳を近づけたけどよく聞こえない。

『あっ、お、小村か?』

あ、少し聞こえた。

「あっうん!!小村だけど!」

その後、少しだけ聞こえた。

はっきり聞こえた。


『…好き』

姉の顔つきがかわる。
どうせいつもの恋愛相談だと思っていたんだろう。


「逸樹…あっち行ってて?」

「……。」

誰がこんなオイシイ場面で出て行くんだ。

「うん…うん…でも私…うん…」

申し訳なさそうに眉を下げて姉はうんしか言っていない。


「ごめん、友達としか思えなくて、…え!?いないよっ!」

彼氏か好きな人を聞かれたらしい。



「いない!いない!そんな物好きいない!」

告った奴にいうか、それ。
こいつバカだね…。


「うん…じゃあね…また明日」

< 22 / 30 >

この作品をシェア

pagetop