7 STARS
「有名どころですと…あれが北斗七星ですよ。ひしゃく、と言えば伝わりますか?」

「北斗七星くらいあたしだって知ってますー!」

「あ、そうですか。それは失礼しました。」

「あのねぇ、夏原はあたしをバカにしすぎ!夏なら多少空見たりするよ?」

「そうなんですか。それは知りませんでした。」

「ん、でも待って、どれ?どこにあんの北斗七星?」

「あそこですよ。7つ、星がひしゃくのように繋がっているでしょう?」

「えー分かんない!どれー!?」

「ですから…。」

「へっ…?」


ひやりとした、それでいて少し柔らかい何かが頬に当たる。
声が直に届いてくる…ってことは…


「ここを真っすぐ見上げてください。
あれが北極星です。北極星から左の方に…。」

「ちょちょちょ…待って待って待って!」


あたしは思い切り夏原から離れた。


「…何ですか?」

「ほっぺ!ほっぺくっついた!」

「え?あ、あぁ、言われてみればそうですね。」

「言われてみればじゃないっつーの!
ドキっとするでしょー!あたしはこういうの慣れてないんだから!」

「…こういうの、と申しますと?」

「だから!…ってべ…別に何でもない!」

「何でもある時の顔ですよ、それ。」

「もーいいっ!帰るっ!」

「え、あ…。」


何か言いかけた夏原の声を振り切って、あたしは階段を駆け降りた。
心臓がドキドキっていうよりはむしろバクバクしてる。
…上からぎゅっと掴んでも全然収まらない。
むしろ冷たい空気が肺を刺激して、余計に苦しくなる。


「…っ…はぁ…はぁ…っ…
あ…やば…これ…。」


ブランケット、そのまま持ってきちゃった…。

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