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「…いつか返す。とりあえず、今日は帰る!」


誰もいないのにそう宣言して、あたしはチャリに跨った。
そしていつもみたいにぐっと踏み込む。


冷たい風が頬を通り過ぎていくのに、寒さなんて少しも感じない。
身体が、何よりもほっぺが熱い。熱くてたまんない。


「あーもう!夏原のバカ!」


夏原の香りが…する。
あの時確かに、ふわっとあたしの鼻を刺激した。


そして最初は冷たかったけど、でもじわりと伝わってきた熱。


あれは…夏原の熱。
頬が触れていた、証拠。


「もーやだやだ!なんなの心臓!うるさい!てゆーか苦しい!」


意味が分かんない。
手で触れられただけで、頬が触れただけで…こんな苦しいとか、そんな気持ちをあたしは知らない。





* * *


「ブランケット、持って行かれてしまいました、ね。
それに…またしても私は嫌われた、のでしょうか?」

屋上に夏原の切ない声が、小さく響いた。

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