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通い慣れた公園に辿り着く。
当然のことながら人は誰もいなく、ひんやりとした空気だけがそこにあった。


「…それにしても、さっきの発言には驚いたなぁ…。」

「え?」

「親父も母さんも気が早いっつーか…。
まぁ、菜々子のこと大好きだから嬉しいんだろうけど。」

「うちの両親も奏人のこと大好きすぎるよ。
むしろあんたなんかで大丈夫なのとか…普通に言われる。」

「あはは、なにそれ。お互いの両親が自分の子どもより相手の方を好きってどうなんだこれ?」

「分かんない!でもうちの両親の奏人の気に入りよう、尋常じゃないよ?」

「うちもだって。父さんなんか娘が欲しかったんだーとか普通に言ってるんだ。
まったく、俺と弟の立場がないよ。」

「そんなことないでしょ。奏人のお父さんもお母さんも、奏人のことすごく大切にしてるなぁっていつも思うし。」

「そんなの、菜々子の家もだろ?
でもま、俺は正直少しほっとしたけど。」

「ほっとした?なんで?」

「…『娘はお前みたいなやつにやらん!』とか言われるかなーと。」

「ぷっ…!あはは!なにそれー!奏人、ドラマ見過ぎじゃない?」

「わっ…笑うなよ!普通男はそういう場面を考えるんだよ。
その…結婚、とか考えたら。」

「え…?」


不意にまた出た〝結婚〟の二文字。
繋がれた手が、なんだか妙に熱い。


「俺ら、こんな話したことなかったのにな。
親の方が先走ってるってちょっと笑えるけど。
…でも俺、ゆくゆくはそういう風に…って考えてるから。」


真っすぐな奏人の声。
冷たく澄んだ空気を伝って耳に届く。


…手も耳も、熱い。

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