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「夏の大三角形はご存知ですか?」

「名前だけな。」

「ほら、あれです。あのすごく光ってる3つ。あれを結んで夏の大三角形なんです。」

「…どれだよ?」

「齊藤先生、ちょっとこっち来てもらえます?」


齊藤は一瞬訝しげに首を傾げたが、汐織の手招きに負けてゆっくりと汐織の方にやってきた。
開いたままのドアに少しもたれかかるように、齊藤が立っている。


「そこから丁度真っすぐ見上げたところの大きく光ってる星です。」

「あー…分かった分かった。あの3つな。」

「はい。七夕の織姫と彦星で有名な星二つと、はくちょう座のデネブ、3つを繋いで夏の大三角形って言うんですよ。」

「織姫と彦星の星があるのか?」

「はい。織姫の星がこと座のベガ、彦星の星がわし座のアルタイルです。」

「…詳しいな。」

「オタクっぽくてすみません。でも好きなんです。」

「謝ることじゃない。お前が何を好きだろうとお前の自由だし。」

「でもっ…あ…熱く語りすぎましたね。」

「いや、面白かった。俺には未知の領域だからな。」

「そう言っていただけて良かったです。」

「でも、帰り道、自転車乗りながら星見んのはやめろよ。お前みたいなドジはいつか事故る。」

「なっ…なんで私が帰り道星見てるって…。」

「勝手な予想だ、予想。」

「当たってるんで何とも反撃しにくいです…。」


せっかく少しは齊藤よりも優位に立てたと思った矢先、すぐに自分のクセを見破られてしまったことは、汐織にとっては小さな痛手だった。
…齊藤はやはり齊藤で、汐織の1枚上手どころか18枚くらい上手だ。

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