月夜の太陽
私たちしかいない静まり返っているテラスでは、カップを動かす度に小さな音が響き、その音ですら大きく感じてしまう。


ロナウドはどうやら私が口を開くのを待っているようだ。


正直にベラベラと話してくれるはずはないが、私は話を切り出した。



「何故、私と婚約したかったんですか?」

『婚約を申し込んだ時に申した通りですよ。ルナを愛しているから婚約し結婚したかったんです』

「……嘘つき」

『えっ………』



私は持っていたカップをソーサーの上に置き、椅子の背もたれに寄っ掛かりロナウドの目を見た。



「先程のロナウドを見てしまったら、そんな仮面を付けている様な笑顔で"愛している"などと言われても、信じられません」

『…………』



本人に自覚がないのか、私の言っている事があまり分かっていない様だ。


自覚がないという事は、みんなでお茶をしていた時のロナウドが本当は彼の自然体なのかもしれない。






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