月夜の太陽
『父はとても優しく、誰よりも私たち家族の事を思ってくれていました。私が王位継承のことなどどうでもいいと言うと、お前の好きなようにするといいと言ってくれるような人でした』

「でも…今は王位継承にとてもこだわっていらっしゃいますよね?むしろ、もっと大きな地位についてほしいというようなお考えではないですか?」

『………その通りです』



俯き頭を抱え込むように座るロナウド。


顔は見えないが、内に秘めていた感情が少しずつ滲み出てきているようだ。



『いつからそうなってしまったのか…よく覚えてはいませんが、逆らったり父の考えにそぐわない事を言えば怒りを露にするようになりました。私に怒っていたとしても、その矛先は全て母に向かうのです』

「そんな…どうして、ですか……?」

『私が母を大切に思っていることを知っているからです。大切な母を見放さないと知っているし、自分が傷つけられるよりも心が傷つくことを知っているからです……』

「逆らえば大切なお母様を傷つけられると知っている貴方は、絶対にお父様には逆らわない…逆らえないということですね」

『恥ずかしながら…仰るとおりです』



祈るかのように合わせられたロナウドの手は震えていた。


怒りでというよりも、己の無力さを情けなく感じている様だ………。





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