月夜の太陽
『どこに行こうとしているの?』

「どこだと思う?」

『その様子だと教えてくれる気はなさそうだ』



私はロナウドに「いいところに行きましょう」と言って並んで歩いている。


いいところだなんて言っておきながら、ただ単に私があの賑やかな場所にいる事に耐えかねただけ。


あそこにいると、街に行っていた時のことを思い出すから。



「着いたわよ」

『…薔薇の香り』

「そう、ここは我が城自慢のバラ園よ」



私はバラ園の扉を開き、ロナウドを中へと招き入れた。


ロナウドは目を輝かせ、ゆっくりと中に入ってきた。



『凄い……』

「お父様がこのバラ園を作らせたんですって、お母様と恋人になってから」

『ずっと昔からシエル様はローズ様のことを愛しているんだね』



愛…今の私たちに無いもの。


これからもきっと愛は生まれない。






< 187 / 471 >

この作品をシェア

pagetop