月夜の太陽
キョトンとした顔を浮かべたエレナは首を傾げてしまった。


その様子を理解できず私も首を傾げてしまい、変な空気が漂ったときお母様のクスクス笑う声が聞こえてきた。



「それはこの世界ではない習慣よ。エレナは知らないわ」

「そうなの!?」

「それは異世界で覚えた習慣だもの」

「異世界……ですか?」



小指の意味も異世界の意味もよく分からないという表情を浮かべているエレナに、お母様が丁寧に説明を始めた。



「私が十数年暮らしていた異世界ではね、約束をする時にこうして小指と小指を絡めるの」



私の小指にお母様の小指が絡まり、子供のときによく約束を交わしていたなと懐かしくなった。


その約束を守るのに何度こうして小指を絡め約束を交わしたことだろう。


一度で約束を守れた覚えがないなと思うと、子供のときのこととはいえいささか自分に呆れてしまった。



「指切りげんまん嘘つぅいたら針千本飲ぉますっっ」



絡めた小指を軽快に揺らしながら楽しそうに歌い出したお母様を楽しそうにラキが笑いながら見ていた。


エレナは相変わらずポカーンとしていて可笑しくて笑ってしまった。



「歌は人それぞれ微妙に違うみたいなんだけど、こうやって約束をするのよ。絶対守りますって意味でね。でもこの歌詞ってちょっと怖くて、いつも歌なしで指切りを交わすことの方が多かったかしらね。そう言えばルナとは数え切れないほどの約束を交わしたけれど、数えられるくらいしか約束を守ってはくれなかったわね」



お母様の言葉に笑顔で返す…誤魔化すしかなかった。





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