月夜の太陽
優しく抱きしめてくれているけど、私はサハルドの背中に腕を回すことが出来なかった。


それはなんだか違うような気がしたから。


今まで兄弟の様な関係でリオと同じように接してきたけど、今は1人の男だったんだと感じずにはいられない。



「もう、離して」

『…………』

「サハルド?」



渋々といった感じで体を離してくれたサハルドの顔は真剣で、目も熱を帯びていた。


その目を見ていられず目を背けてしまった。


サハルドは私の頭に触れ、そのまま撫でるように手を下ろすと顔の位置で動きを止め、両頬を大きな手で包み込んだ。


顔はサハルドの方を向いているが私は目線を落としサハルドを見なかった。


その時おでこにひんやりとしたものを感じ、目線を上げると両頬を包まれたままおでことおでこが触れ合っていた。



『今だけ…今だけでいい……もう少しこのままでいさせてくれ』

「……今だけ、だからね」

『あぁ』



こんなに私の事を特別に想ってくれていたんだど今頃になって気付くなんて……でも、私はサハルドの気持ちに応えることは出来ない。


好きだけど……特別な好きじゃないから。


……ごめんね………ありがとう。






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