月夜の太陽
控えめに部屋に入ってきた女性は泣いたせいで目を腫らしていたいたが、綺麗で清楚で上品な女性だということは分かった。


本当にこの女性が俺を産んだのかと疑いたくなるほどに。


気まずいという空気ではなかったが、お互い何を話していいのか分からず暫く沈黙が続いた。


気付けば仕事の途中だろうに駆けつけてくれたシエル様が、ドアのところによっかかってこちらの様子を見守ってくれていた。



「……無事で…良かった」



蚊の鳴くような声でそう呟き、潤んだ目で一生懸命俺を見詰め心から心配してくれていたんだなと感じた。



『貴女が…丈夫に産んでくれたお陰です』

「いいえ、リリアのお陰よ。私の事を母親だなんて思う必要はないわ」

『…………』

「母親らしいことなんて何一つしてあげられなかった……それに、貴方を混乱させたくないの」



椅子に座ることもベッドに座ることもせず立ったまま話をしていて、意図的に距離を置いているんだろうと思った。


声や話し方で分かる。


凄く優しい人だ……自分の気持ちよりも俺の心境を優先してくれているんだろう。







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