月夜の太陽
笑って見せると彼女は戸惑った顔をした。



『俺は地位も金も興味がありませんから貴女の姓を欲しいとは思っていません。それに俺の存在を知れば国は混乱するでしょう。でも、俺の事を息子だと思ってくれるなら、俺も貴女の事を母親だと思いたいです』

「勿論よ……勿論貴方の事は息子だと思ってるし、片時も忘れたことなんてないわッッ」

『その言葉だけで俺には十分です。ありがとうございます』



口元を手で覆い涙をボロボロと零す彼女が少しエリーと重なって見えた。


男はみんな本能的に母親の影を女に重ねてしまうというが、カインもそうだったのかもしれない。


山小屋で怯えながら泣いていた彼女とエリーを無意識の内に重ねていたに違いない。



『今この時を逃したらもう許されないことだと思うので言わせて下さい。恐らくこれが最初で最後になると思います』



彼女は涙を拭いながら顔を上げ、不安げな目で俺を見詰めた。



『……母さん、産んでくれてありがとう』



アリアさんは子供の様に涙を流し始め、恐る恐る俺に近付き手を伸ばしてきた。


どうしたいのか伝わってきて、俺は両手を広げアリアさんを受け入れた。



「ソル……貴方は私のたった一人の大切な子供、本当に愛してる」



そう言ってしがみつく様に泣いているアリアさんの背中を軽く叩いていると、どっちが親か分からないなと思った。


だけど、アリアさんの心臓の音が伝わってくるたびに懐かしく感じ安心している俺はやっぱり子供なんだろうと思った。






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