月夜の太陽
『半分意識がない状態からそのまま気を失い、そして暗闇の中で目を覚ましました。そこで少し父と話をしました』

「どんな話をしたの?」

『他愛もない話です。ローズ様の言うとおり父は表情がなくて冷たい感じがしました。それに聞いていた以上に自分勝手な奴でした。だけど……温もりを感じました』

「そうね、とても温かい人よ。でもそれが他人に伝わりにくい上に誤解されやすい人だったけれど」



懐かしそうな遠い目をして話すローズ様をシエル様は手招き腰を抱き寄せ自分の膝の上に座らせた。


いつ見ても綺麗で妖艶なシエル様の顔は今も勿論そうだが、どこか子供の様に拗ねている様にも見えた。


ローズ様はそんなシエル様の顔を見なくても分かっているとでも言うように可笑しそうに、だけど嬉しそうに声を漏らして笑っている。



『ソル、よくやってくれた。お前がいなければビリー様を殺していた』

『いいえ、おいしいところは全て父に持っていかれました。父のお陰です』

『皆が前向きに頑張ったからやり遂げることが出来たんだよ。騎士団も暗部もとにかくみんな必死に頑張ったんだ』



今まで口を閉じて聞いていたリオに最後は上手くまとめられてしまい、みんな同じタイミングで声を上げ笑い合った。


また幸せな時間が戻ってきたんだと感じた。


だけど、ここにルナがいないことにどうしようもない不安を覚えた。






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