ちぐはぐ遠距離恋愛
――「…ちゃん」
――――「ろ…ちゃん」
「真白ちゃん!」
大きな声が頭のなか突き抜けた。
「えっ!?…あ、先輩」
「どうしたの?今日まだ一回も口つけてないでしょ」
先輩はあたしの楽器を見る。
「あ…すいません。ちょっとボーッとしてて……」
「大丈夫?具合悪かったりしない?」
「しませんしません!」
「そっか」
天使のような笑顔をあたしに見せた、葵[あおい]先輩はあたしの隣に座る。
先輩の綺麗で優しい音があたしを包み込んだ。
それをしばらく聞いて、あたしもやってマウスピースに口をつけた。
いまさらだけど、
大野真白は、吹奏楽部です。
楽器パートはクラリネットっていう木管楽器。
ちなみに舞と、彩夏、優香子も同じ。
舞はサックスっていう同じく木管楽器を。
彩夏はトランペット、優香子はホルンを担当にして活動してる。
葵先輩は、あたしのクラの先輩。
学校きっての天才奏者だ。
音楽の才能がずば抜けて高い先輩は、歌はもちろん、ピアノだって指揮だってお手の物。
クラなんて本当にハンパなくて、右にでるものなんていない。
あたしが葵先輩の隣にいるのさえ気が引けちゃう。