ちぐはぐ遠距離恋愛





――「…ちゃん」
――――「ろ…ちゃん」




「真白ちゃん!」




大きな声が頭のなか突き抜けた。




「えっ!?…あ、先輩」

「どうしたの?今日まだ一回も口つけてないでしょ」


先輩はあたしの楽器を見る。



「あ…すいません。ちょっとボーッとしてて……」

「大丈夫?具合悪かったりしない?」

「しませんしません!」

「そっか」



天使のような笑顔をあたしに見せた、葵[あおい]先輩はあたしの隣に座る。



先輩の綺麗で優しい音があたしを包み込んだ。

それをしばらく聞いて、あたしもやってマウスピースに口をつけた。




いまさらだけど、

大野真白は、吹奏楽部です。

楽器パートはクラリネットっていう木管楽器。


ちなみに舞と、彩夏、優香子も同じ。
舞はサックスっていう同じく木管楽器を。
彩夏はトランペット、優香子はホルンを担当にして活動してる。


葵先輩は、あたしのクラの先輩。

学校きっての天才奏者だ。


音楽の才能がずば抜けて高い先輩は、歌はもちろん、ピアノだって指揮だってお手の物。

クラなんて本当にハンパなくて、右にでるものなんていない。

あたしが葵先輩の隣にいるのさえ気が引けちゃう。




< 78 / 420 >

この作品をシェア

pagetop