若恋【完】
奏さんは無言でわたしを抱き締めたまま。
「あ、桐花さんと桃花さんから飲むはずだった毒をもらってきたの」
バックにしまってきた毒の袋をバックごと仁お兄ちゃんに渡した。
「奏さん?」
「………」
「奏さん?」
「………」
まだ放してくれないその胸は早い鼓動で大きく脈打っていて。
どんなにか心配してくれたんだろうって今さらのように思った。
「奏さん…ごめんなさい」
やっと放してくれても奏さんは無言だった。
「やっぱ、森内だったな。若、どうする?」
わたしのバックを開けて仁お兄ちゃんが毒の二袋を取り出した。
「パーティー会場で森内にこれを飲ませるか?」
ヒラヒラと振って見せる。
「パーティーでふたりがしくじったと判ればどういうふうに出てくるかだな」
顔をあげた奏さんは、もう裏の世界に関わるひと特有の鋭い空気を纏っていた。