危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜
玄関で靴を履き、章さんにご挨拶しようと顔を上げたら、章さんも靴に履き替えていた。


私がキョトンとしていたら、

「さあ、行こうか?」

と言って章さんはドアノブに手を掛けた。


「あ、あの、一人で帰れますよ?」


今までにも何度か章さんから「送ろうか?」と言われた事はあった。


でも、それは単なる社交辞令だったと思う。実際、私が「大丈夫です」と言うと、章さんは「そう? 気をつけてね」とか言って、あっさり引き下がっていたから。


でも、この日の章さんは違った。本当に私を送ってくれるらしい。


「そう言わずに送らせてよ。ちょっと話もあるし」


「あ、はい」


頑なに断るのもどうかと思い、私は同意をした。
それと、話って何だろう……


章さんはドアを一旦開き掛けてから、「あ、そうだ」と呟き、ドアを元通りに閉め、クルッと後ろを向いた。そして、


「おい、涼! 綾子ちゃんを駅まで送って来る」


と、2階の涼の部屋に向かって大きな声で言った。


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